こんにちは。グラフィックファシリテーター(R)やまざきゆにこです。

モヤモヤネガネガを吐き出すグラフィックファシリテーションの現場では、安心安全な場をつくるために必ず「対話のエチケットマナー」とか「今日の対話の約束事」というものを毎回、主催者や事務局の方たちと相談しながら創っています。

「ネガティブな感情」を参加者がいかに楽しく吐きだせるかということが、グラフィックファシリテーションの現場では大前提にあるので、同じエチケットマナーが他の企業やワークショップに通用することはまずなく、すべて毎回オリジナル。一字一句、言葉選びも結構慎重に何度も見返し創っています。

わたし自身、当日まで参加者に会えないことがほとんどなので、主催者や事務局の方に、参加する人たちの顔を思い浮かべてもらいながら、参加者同士や主催者との関係性、普段の発言ややりとりの様子といった組織文化などを教えて頂きながら、一緒に創っています。

そうして毎回、主催者や事務局の想いのこもった個性的な約束事が出来あがるのですが、今回はその中で個人的にお気に入りの1つをご紹介します。どうですか、これ。楽しくないですか?

「怖い顔せんといて~」

*この5つのエチケットマナーを絵にしたのが、このページのトップの画像です。

じつはこれ、参加する若手メンバーたちが、日頃のモヤモヤネガネガを吐き出せるようにと、役員の方たちがウンウン唸って生み出した愛情いっぱいの作品なのです。1泊2日の研修で、会社の未来ビジョンをつくって、自ら現場に帰って実行するリーダーとして選ばれた若手たちですが、本社に来るだけでも緊張してしまう、かしこまってしまう、若手メンバーの顔を思い浮かべながら、あれやこれやと想いを巡らし創りあげました。

例えば、そんなん言うてもええんやろか。何ゆうてもええんやで~」が生まれた背景は、「普段の会議でみんなが黙っているのはなぜか」という話になったとき、他社では「縦割り組織で余計な仕事の依頼にみんなギスギスしている」といった話をよく聞きますが、こちらの会社では「あの人も頑張ってはるしなあ」と思って無理な依頼も黙って引き受けてしまうという話から生まれたのでした。

また当初は4箇条だったのですが、1泊2日の研修で初日は夜の飲み会まで含めてネガを吐き出し切ろうと決めていたので「遺恨を残さないためにもどうしても入れたい」という役員の方の想いから5「なんやかんやで最後は愛やで」が追加されました。

当初は黒字の標準語だけの約束事だったのですが、わたしの「普段の会話でつくってほしい!」というリクエストにも答えていただきました。そうしたら、こんなノリツッコミ?のある素敵なエチケットマナーができあがったのでした。

役員のみなさんからの「役職や肩書は忘れて、お互い一人の個人として、仲間として、礼儀を持って、会社をよくするために、思いっきりネガティブな想いを吐き出そうや」というメッセージはしっかり伝わりました。初対面同士の若手メンバーも、本当の気持ちを吐露しあって、初日の夜には「ここまでネガを言いきったら後はやるしかないですね」という声まで聞こえてきて、わたしにとっても忘れられない2日間になりました。

ちなみに、他のクライアントさまにこのエチケットマナーを紹介すると「関西弁って温かくていいですねー」とよく言われます。確かに!関西弁といえば、わたしのお気に入りのエチケットマナーをもう1つ、ご紹介しておきます。↓右下の絵。

「守らなあかんこと」

「しゃべり過ぎたらあかんでー」「傷つけたらあかんで」「愛やで」


「しゃべり過ぎたらあかんでー」とある通り、このワークショップは参加者のみなさんが明らかに「喋り出したら止まらない」人たちの集まりなのがよく分かりますね。あまりしゃべらない人も参加するワークショップでは「話していない人にそっと気配りをしましょう」なんていう一言を入れたエチケットマナーもあります。

ところで、絵の左上に次の言葉が書かれているのですが、この「缶」とは何のことだか分かりますか?

「話すときは缶を持って。缶を温めすぎたらあかんでー」


これはこの日の「トーキングオブジェクト」について言ってます。対話テーブルの真ん中に「モノ」を置いて、話をする人がまずその「モノ」を持って話す→次に話をしたい人にその「モノ」を手渡す、という使い方をすることで、テーブルに座った人たちが満遍なく均等に会話できるよう自然と意識させてくれるマジックツール「トーキングオブジェクト」。

どんな「モノ」を選ぶかは、ワークショップによって違います。主催者の個性が出てこれまた面白いです。手のひらサイズのぬいぐるみだったり、生花一輪だったり、松ぼっくりだったり。そこで、このワークショップで主催者が用意したのが「缶」。しかも、それは参加者が「この暑い夏に、今すぐ飲みたい」と口をそろえたほど「冷えた缶ビール」でした。

トーキングオブジェクトはたいてい、テーブルに置かれていることが多いのですが、この日は、直前までクーラーボックスでしっかり冷やしておいて、司会の方が「各テーブルから代表の方、トーキングオブジェクトを取りにきてくださ~い」と声をかけました。そこへ代表者が10人ほど取りに行ってみると、箱の中には銘柄の違うビールが並んでいて、初対面の皆さんも銘柄選びであっとう間に盛り上がっていました。席に着いてからも、テーブルで待っていた初対面の人たちと「缶、空けちゃダメなの?」「飲まずにはやってられない!」「へえ~こんなビールもあるんだ」「俺は○○ビールがよかったな~」などなど会話が止まらない。アイスブレイクもできて一石二鳥のトーキングオブジェクト。みなさんも試してみては?